スタートアップ大賞「メトロウェザー」!その事業共創の裏側は…

こんにちは。鉄道員(ぽっぽや)社長の柴田です。

「ベンチャー×JR」で新しい未来にチャレンジする事業共創プログラム、「JR東日本スタートアッププログラム」
先日(12/8)、5回目となるプログラム2021のDEMO DAY(発表会)を開催しました。

今年は、昨年に引き続き無観客にて開催。当日の模様をオンラインで配信する形をとりました。
師走のご多用の時期にもかかわらず、たくさんの方にご視聴をいただき有難うございました。

プログラム2021は、「コロナなんかに絶対負けない!」という思いを込めた、「地域共創」「デジタル共創」「地球共創(SDGs)」の3つのテーマで、事業プランを募集。
その思いに共感してくれた13の起業家の皆さんが、新たに私たちの仲間に加わってくれました。

この日発表したのは、その13の共創パートナーと創り上げた13の事業共創プラン
「事業共創プラン」の言葉どおり、「事業を創る」ことにとことんこだわって、「ベンチャー×JR」で擦った揉んだしながら練り上げました。そのお披露目&決意表明の場が、当日のDEMO DAYでした。

今年は特に、私たち移動を生業とする者にとってはかつてない逆境の中でのチャレンジとなったので、それだけに13の事業共創プランそれぞれに特別な思い入れがあります。
何とかして事業化に結びつけたい、みんなの夢を実現したい…。この日の皆さんのアツいプレゼンを聞いて、そんな風に強く思いました。

今日は、そんないずれも激推しの事業共創プランの中から、総合グランプリにあたる「スタートアップ大賞」を受賞した事業プランを紹介します。
ほんとうは、13の事業共創プラン全部を紹介したいけど、長文必至なのでまた次回以降に…。


大賞に輝いたのは、メトロウェザー株式会社。彼らと練り上げた共創プランは「小型・高性能ドップラーライダーによる支障物検知」です。
独自の信号処理技術による小型・高性能ドップラーライダーを活用して、線路内の支障物検知を行い、線路内作業の安全性向上と、将来的な自動運転等鉄道現場への導入を目指します。

これぞ、オープンイノベーションの醍醐味。ベンチャー企業と大企業という、かけ離れた存在が出会ったからこそ生まれた事業共創プランです。
メトロウェザー社の小型・高性能のドップラーライダーは、もともと風況計測で用いられる技術でした。

私たちも、はじめは風況計測で同社の技術を活用することを考えていたのですが、議論を重ねていくうちに、さらに新たな可能性があることに気づきます。
それが、その独自のリモートセンシング技術と信号処理技術を活用した、「障害物の検知」でした。

同社のドップラーライダーは、赤外線レーザー光を照射することで、15㎞先までの風の動きを計測できるスグレモノ。
これだけでも十分に有用性が高いのですが、同じテクノロジーを活用すると、線路内に支障物がないか、構造物に異常がないか、検知・監視できることが分かったのです。

私たちJR東日本にとっては、鉄道線路内の工事の安全確保は「超」重要課題
ただ、鉄道工事の多くは夜間作業で、しかも数時間しか作業時間がとれない中、線路内に工具などの置忘れがないか等の確認作業はほぼ目視に頼っていて、心理的にも体力的にもかかる負担は大きいものとなっています。

こうした課題や悩みを、彼らのドップラーライダーで解決できるのではないか…
期待される効果としては、確認作業の精度向上や目視確認の自動化、それによる工期短縮という、安全性と生産性双方のレベルアップです。

彼らのドップラーライダーの長所として、夜間でも雨天でも計測可能というのもあります。
しかも、現在開発中のより小型のライダーは、持ち運び可能な大きさです。こうした新たな技術を鉄道と組み合わせると、これまでの発想とは異なる新たな鉄道工事の仕組みを構築できるかもしれない…。

そうした妄想…否、夢を後押しできるのが、インフラを持つ大企業の強みです。
今回、私たちJRが、その実証実験の場として提供するのは、首都圏にある実際の在来線です。現在休止されているものの、営業線と同じような設備でPoCを行うことが可能です。

そこに小型ドップラーライダーを持ち込んで、線路上にある障害物の探知距離や検知できる大きさなどを検証する計画です。
当事者ながら、JRならではのスケールのでっかいPoCだと思います。これをできるのが、大企業の強み。ベンチャー企業のビジネスモデルやテクノロジーの社会実装を後押しする加速装置だと思います。

さらにここは一里塚。ここを乗り越えれば、現在鉄道沿線で使われている、風況観測やホーム転落検知など、様々な監視・検知機器への応用も考えられます。
さらには、将来見込まれる自動運転支援にまで、同技術の活用が可能ではないかと、私たちは妄想…否、期待をふくらませています。

もちろん、JRで有用性を確認できれば、他の鉄道会社や同じ悩みを持つインフラ工事にも展開することができるでしょう。
まさに、「鉄道を変える」だけでなく「日本のインフラを変える」技術になるポテンシャルがあると、私たちは考えています。

少し熱が入りすぎかもしれませんが、繰り返しになりますが、この事業共創って、「ベンチャー×大企業」のオープンイノベーションの醍醐味なんじゃないかと思うんですね。
ベンチャー企業の持つ先進のテクノロジーが、大企業の持つリアルな現場の課題と出会って、そこではじめて目指す姿が具体的なカタチになる。そして私たちはその達成に向けて、チームとなって事業プランを練り上げて、リアルの現場で課題解決にチャレンジしていくっていう…。

インフラを持つ私たち大企業なら、ベンチャー企業の持つテクノロジーやビジネスアイデアを、「社会実装」という形で後押しすることができます。
ときどき面倒くさいことを言うけど、それも社会実装を成し遂げるためには必要なプロセス。お互い共通の目標に向かって、上下なんかなく共創パートナーとして、新たな地平を切り拓いていく。

「地域を変える、鉄道を変える、社会を変える」
今回プログラム2021で掲げたキーワードは、まさにそうした事業共創を進めていくための、マジックワードなのかもしれません。

やってやりましょう、思いっきり。「ベンチャー×JR」だから創れる未来があります。
スタートアップ大賞おめでとう、メトロウェザー!ここから一緒に、ニッポンの未来を創っていきましょう!

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