続・JR東日本スタートアッププログラム2020発表会

こんにちは。鉄道員(ぽっぽや)社長の柴田です。

2020年11月26日に行われた、JR東日本スタートアッププログラム2020発表会
18社の共創ベンチャーの皆さんが、これまで練り上げてきた「ベンチャー×JR」の事業共創プランを発表してくれました。

前回、当ブログで、その中からスタートアップ大賞など各賞を受賞した5社のプランを紹介しましたね。

実はその発表会で、冒頭の開会宣言に登壇した私がコミットしたことがあるんですね。
それが、この18の事業共創プランを、実証実験をぜんぶ成功させて、ぜんぶ事業化したいというものでした。

ずいぶんと大きく出ちゃいました…(苦笑)。
でも、それくらいの強い思いはありますし、それくらいの本気が無いと実現できないですから。やっちゃいましょう!

…ということで、今回のブログでは、そんな事業化に向けた決意を込めて、前回紹介できなかった13の事業共創プランをぜんぶ紹介しちゃいましょう。
タイトルは「続・JR東日本スタートアッププログラム2020」。事業化に向けた挑戦を、どこまでも続けていきます!

■株式会社AILL

まずはトップバッターで登壇してくれた株式会社AILL
同社との共創プランは、「AIの活用による恋愛を通じた移動の創出と地域活性化」です。

AILLは、世界初AI恋愛ナビゲーションアプリ「Aill (エール)」を展開。恋愛で社会を元気にしようとチャレンジする、何ともユニークなベンチャー企業です。
この市場は、実は経団連なども注目しており、少子高齢化対策でオンライン婚活活用の提言も出されています。AILLは、その先進企業として、独自のAI恋愛アプリ「Aill」を開発し、大企業の福利厚生サービスへの展開を進めています。

今回、AILLとチャレンジしたいのは、AI恋愛アプリ「Aill」を活用した東北の活性化
全国の中で最も人口減少が進む東北…。コロナで広がるリモートワークは、東京への若者流出を食い止めるチャンスでもあります。その動きを、恋愛のパワーで応援したい。「Aill」で良縁を創出することで、地方移住や東北経済の活性化につなげたい…
そんな本気の事業共創を行います。合言葉は「東北にKoi」。AILLとJR東日本で、東北を元気にしていきます。

■テラスマイル株式会社

続いて、宮崎からやって来たアグリテック・ベンチャー、テラスマイル株式会社
同社との共創プランは、「デジタルデータを活用した農業経営活性化による地方創生の推進」です。

テラスマイルは、農業に特化したクラウド型経営支援ツール「RightARM(ライトアーム)」を開発・展開しています。
これは、人手不足・高齢化が進む農家にとっては救世主とも言えるもので、現在は九州を中心に展開が進んでいます。

今回、そのテラスマイルの技術を東日本、東北で展開していきます。
最初のフィールドとなるのは、福島にあるJRとまとランドいわきファームです。実は、JR東日本はトマトや酒米など農業にもチャレンジしてるんです…。まずはここに「RightARM」を導入して、農業のDXにチャレンジします。
ここがうまくいったら、東日本全体に拡大していきたい。農業で日本を元気にしていきたい。そんなチャレンジを、テラスマイルと一緒にスタートします。

■株式会社電脳交通

そして、タクシー業界のDXにチャレンジする、株式会社電脳交通
同社との共創プランは、「データを活用した鉄道とタクシーの連携による稼働最適化」です。

電脳交通は、タクシー会社向けにクラウド型配車システムや配車センターを提供するベンチャー企業です。
代表の近藤さんは、徳島で家業のタクシー会社を継いで経営再建した経験から、衰退する地域交通の課題を解決しようと起業しました。

電脳交通とチャレンジするのは、同じく地域交通の課題に悩む東北エリアにおけるタクシーのDXです。
具体的には、新幹線駅もある山形県米沢市をフィールドに、鉄道の乗降データを活用したタクシー配車の最適化にチャレンジします。鉄道とタクシーをデータでつなげることで、観光の足、生活の足をさらに便利にしたい。持続的な地域交通を実現したい。米沢から他の地方都市へ、未来の地域交通に挑んでいきます。

■株式会社ABAL

独自のVR(仮想現実)技術で新たな価値創造に挑む、株式会社ABAL
同社との共創プランは、「VRで実現する新しい店舗形態の確立」です。

複数のひとが同時に接続、多階層のVR空間を自由に移動できたり交流できたりする…。
そんな近未来型VRテクノロジーが「ABALシステム」です。私は実際にこのVRを体験したのですが、のめり込み感が半端ありませんでした…。

そんなABALシステムを開発する同社と共創するのは、東北をはじめとした地方の名所や観光地をVR空間に再現、さらにはVRの中で地域の名産・特産品を体験してもらうという、新しい旅と購買のカタチです。
今回は、JR東京駅に、青森の観光や名産をVRで体験できる未来型物産展をつくろうとチャレンジを進めています。ABALシステムだと、たった1坪に100店舗が出店することも可能なんですよね…。どんな未来型物産展になるのか、とても楽しみです。

■株式会社オマツリジャパン

お祭りを起点として地域の活性化にチャレンジする、株式会社オマツリジャパン
同社との共創プランは、「祭りを起点とした体験型プログラムによる地方におけるファン創出」です。

皆さん、子どもの頃、お祭りが楽しみで仕方なかったのではないですか?お祭りに参加することで、地域とのつながりを構築できたりするんですよね。
その祭りがいま、大変な危機を迎えています。コロナによる自粛により、日本全国の祭りが軒並み中止に…。このまま、祭りの灯を絶やしてはいけません。

そんな問題意識から、オマツリジャパンとチャレンジするのは、祭り参加のニューノーマルをつくること。体験型プログラム「祭り留学」です。
移動が困難な今だからこそ、「トキ消費」を大切にしたい。祭りの準備段階から現地を訪問し、地域との交流を深めてもらう。もちろん、祭り当日はチームの一員として神輿をかつぐ…。そんな新しい旅づくりにトライします。
オマツリジャパンのミッションは「祭りで日本を盛り上げる」。まさに、その目指す姿の通り、コロナに負けず、祭りで日本を盛り上げていきたいですね。

■株式会社TENT

キャンプ用品のレンタル・販売や企業向けアウトドア研修を手がける、株式会社TENT
同社との共創プランは、「GALA湯沢スキー場のオフシーズンを活用した野外研修ビジネス」です。

コロナによって様変わりした企業研修。多くの企業が、集合型研修からオンライン研修に移行しました。
ただ、私は知っています。人と人のつながりが、座学ではなくて、アフターファイブを含めたリアルのぶっちゃけ合いで生まれることを…。

そんなオンライン時代に希薄化したつながりを取り戻すチャレンジが、TENTと共創した野外チームビルディング研修です。
「密」とはかけ離れた大自然、JR東日本の持つGALA湯沢スキー場のオフシーズンを活用して、すでに2回の実証実験を実施。定員を超える7社33名が参加しました。
参加者の感想はいずれも高評価。これから事業化に向けてさらにブラッシュアップをしていきます。これ、新入社員研修なんかにピッタリかも…。

■myProduct株式会社

「手仕事が受け継がれる地域社会の共創」をミッションに地方経済の活性化に挑む、myProduct株式会社
同社との共創プランは、「ふるさと納税×地場産業による、新しい観光体験の創出」です。

myProductが着目するのは、地方に生きる人々の魅力です。
シャッター街が増えるなど地方経済が疲弊するなか、同社は、その地方ならではの人々の魅力、その人々が代々受け継いできた手仕事に焦点を当てた、新しい旅づくりにチャレンジしています。

私たちは、そうしたmyProductが目指す世界観に大いに共感して、一緒に共創プランを練り上げました。それが、「ふるさと納税×地場産業」による、新しい体験型観光の創出です。
今回の共創では、震災10年をむかえる南三陸町をフィールドに、体験型コンテンツを企画します。myProductの強みは地元にがっつりと入り込むこと。すでに同町とは連携が始まっています。JRの持つ様々なインフラとも連携して、人と人がつながる新しい旅のカタチ「ヒューマンツーリズム」にチャレンジしていきます。

■株式会社SQUEEZE

ホテル業界のDXにチャレンジする、株式会社SQUEEZE
同社との共創プランは、「DXを活用したニューノーマル時代の次世代型宿泊運営モデルの実現」です。

コロナによる外出自粛により大変な打撃を受けているホテル業界…
生き残りのために、お客様満足の向上と効率的なオペレーションを両立するDXは、まさに喫緊の課題と言えます。

SQUEEZEは、早くからホテル事業のクラウド化・デジタル化を進めている、ホテルDXのフロントランナーです。自社ブランドでスマートホテル事業を展開するほか、クラウド型運営管理システムを提供しています。
同社とチャレンジするのは、DXを活用した次世代型宿泊運営モデルの実現。同社が開発中のスマートチェックインをJR東日本ホテルメッツ福島に実装して、スマート・オペレーションを実現します。
これを皮切りに、ゲストマーケティングや清掃の効率化、さらには他業界への展開を進めていく計画です。「ホテルのDXからスマートシティへ」。代表・舘林さんが力強く宣言してくれました。もちろん、私たちも全力で後押ししていきます。

■株式会社SPRING OF FASHION

SNSを活用した新たな小売の価値創造にチャレンジする、株式会社SPRING OF FASHION
同社との共創プランは、「ソーシャル販売員による商業施設での新しい顧客体験の創出」です。

同社は、無料で店内にある服を試着して外出できるサービス「KITEKU」を運営するベンチャー企業。
彼らのモデルって、創造的破壊だと思うんですよね。それも既存プレイヤーにとってもメリットがあるのがミソ。「試着」というこれまで価値を生まなかった行為が、「KITEKU」によってSNS上での情報拡散という新たな価値を生む。それがリアル店舗の新たな価値を作り出すっていう、とっても面白いビジネスモデルです。

今回、同社とコラボして、そのモデルをさらに進化させた、誰もがスタイリストになれるショッピングSNS「STYLISTA」に挑戦します。
これは、来店者(SNSユーザー)が売り手になって商品を販売できるという、新しい小売モデル。売る人(SNSユーザー)も買う人(フォロワー)も店側もメリットのある、SNS時代の新しい販売・購買のカタチです。
実証実験では、JR東日本が展開する駅ビルで、SNSユーザーを募って「買い物ツアー」を催行、「STYLISTA」を実際に体験してもらいます。もしかしたら、ユーチューバーならぬスタイリスターが人気職業になるかも…?

■株式会社BONX

コミュニケーションデバイス「BONX」を展開する、株式会社BONX
同社との共創プランは、「コミュニケーションツールと音声認識による鉄道現場のDX」です。

同社が手掛けるクラウド型音声コミュニケーションデバイス「BONX」は、どんな距離でもどんな環境でも自由に会話できるスグレモノ。
はじめはアウトドア・スポーツなどで使われましたが、今はさまざまなビジネス・シーンで活用が進んでいます。

今回、BONXの活用をチャレンジするのは、鉄道車両のメンテンナンス現場
鉄道現場では様々なデジタル技術をとり入れているのですが、それでも改善の余地があります。タブレットはあるものの手が汚れていて触れない、作業しながら持ち運びは難しい、だから手書きのメモをチョークで書いて後で消すなどなど…。
ハンズフリーのコミュニケーションデバイス「BONX」はそうした課題を解決し、また音声を活用することによる新しい働き方を生み出す可能性があります。このデバイス、まだまだ活用シーンはありそうです…。

■EAGLYS株式会社

安全なデータ分析やAI運用を可能にする「秘密計算」技術により社会のDXを推進する、EAGLYS株式会社
同社との共創プランは、「秘密計算を用いたパーソナルデータの新たなビジネス機会の創出」です。

デジタル時代、巷では多くのセキュリティ・インシデントが発生しています。
その理由を「従来の暗号化は不完全であるから」と一刀両断するのが、代表の今林さんです。
そうしたセキュリティの問題を解決するのが、EAGLYSの保有する「秘密計算」技術です。この技術を使うと、常時データを暗号化したまま、よりセキュアな環境でデータ処理ができるようになるのです。

今回の実証実験では、JRのSuicaデータ分析チームと連携。秘密計算の技術を使うことにより、高度なセキュリティを確保したうえでデータ分析をどれほど効率化できるか、その有用性にトライします。
なんと、要する時間を8割削減しようというチャレンジ。企業の持つビッグデータを安全に活用できれば、皆さんの生活をもっと豊かにできるはず。「EAGLYS×JR」でチャレンジしていきます。

■elDesign株式会社

エネルギー・環境問題の解決にチャレンジする、elDesign株式会社
同社との共創プランは、「CO2削減に向けた電力融通プラットフォームの構築および検証」です。

elDesignは、「エネルギー・環境・経済の視点から新たなライフスタイルをデザインする」をミッションに、さまざまなソリューションを提供しているベンチャー企業です。
企業の新電力立ち上げ支援やバーチャルパワープラント事業化支援などを展開。長野県富士見町で、電力事業の収益を地域貢献につなげる事業も展開しています。

今回、同社とチャレンジするのは、世界遺産の中尊寺金色堂などがある平泉を、環境の面でも世界に誇るフィールドにしようというSDGsチャレンジ。
JR平泉駅で、余剰電力を地域へと融通する仕組みをつくります。まずは、自家消費率の向上によるCO2削減をめざし、いずれ他への展開も見据えた電力融通プラットフォームを構築していきたいと思っています。

■株式会社事業革新パートナーズ

植物由来のバイオプラスチックの研究開発・製造にチャレンジしている、株式会社事業革新パートナーズ
同社との共創プランは、「鉄道林間伐材等を活用したバイオプラスチック製品事業化への挑戦」です。

この共創プランは、なんとも鉄道員(ぽっぽや)らしい事業共創です。
鉄道事業者は、強風や吹雪等の自然災害から鉄道の安全を守るために、線路に沿って「鉄道林」を設置しています。その面積は、東京ドーム約900個分…。
そこから生まれる間伐材をリサイクルして、なんとバイオプラスチックを製造しようという、なんともユニークな共創プランなのです。

その際に活用する技術が、事業革新パートナーズの保有する、ヘミセルロースという植物性成分を抽出してバイオプラスチック「HEMIX」を製造する技術
鉄道林からバイオプラスチック「HEMIX」をつくり出し、それを活用したコップなどを駅や鉄道で使おう…。なんてユニークで、なんて環境にやさしいプランでしょうか。はやく、「HEMIX」コップで一杯やりながら鉄道旅行を楽しみたいです…。


こうして振り返ると、あらためてバラエティに富んだラインナップであることに驚きます。
恋愛からお祭り、秘密計算、鉄道林まで、ほんと幅広い…。

それでいて上っ面じゃなくて胸にズンと響くものがあるのは、それぞれが、東北を元気にしようとか、地域の悩みを解決しようとか、社会をより良くしようという思いが込められているからでしょう。

(オフショット/控え室にて)

ベンチャーの持つアイデアやテクノロジーを、JRの持つインフラやネットワークに社会実装社会課題の解決や豊かな暮らしの実現につなげていく…
そんなスタイルが、私たちの目指すところであり、そんな社会づくりが、私たちに求められていることなんだろうと思っています。

あらためて、宣言します。
前回紹介した5件を含めて18の事業共創プランぜんぶ事業化したいと思います。「ベンチャー×JR」で、18の社会課題をぜんぶ解決していきたいです。
みんな、がんばろうね!心を燃やしていきましょう!

(オフショット/リハーサル風景)

最後に、激動の2020年、本当にたくさんのひとにお世話になりました。ありがとうございました!
あらためて、皆様のご厚情とご支援に、あつく感謝を申し上げます。
2021年も懲りずにヤンチャします。何卒よろしくお願いいたします!

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