こんにちは。鉄道員(ぽっぽや)社長の柴田です。
13の共創パートナーが13の事業共創プランを披露した「JR東日本スタートアッププログラム2021 DEMO DAY」。
前回のブログでは、スタートアップ大賞を受賞したメトロウェザー社との共創プランを紹介しました。今回はシリーズ第2弾、優秀賞を受賞した2社の共創プランを取り上げます。(注)シリーズ化は未定…。
1社目は、「㈱カミナシ」です。
彼らと練り上げた共創プランは、「身の丈DXによる車両メンテナンス3.0の実現」です。
カミナシは、現場向けのSaaSを提供するスタートアップです。
その特徴は、未だ人の手によることの多い現場(ノンデスクワーカー)の業務に焦点を当て、そのデジタル化を進める仕組みを提供していること。しかも、現場の誰もが使えるように、ノーコードで作成できるプラットフォームとなっています。
彼らの仕組みを活用することで、これまで主に紙で管理していた工程をデジタルに置き換えることができます。
加えて、これまで見えなかった作業の流れが見えるようになることで、生産性向上だけでなく精度向上にもメリットが期待できます。
今回チャレンジするのは、この「カミナシ」の仕組みを、車両現場に導入すること。車両メンテナンスのデジタル化に挑戦します。
JR東日本は1万台を超える車両を有し、その定期修繕や部品補修取替、帳票記録などで、1車両工場あたり1000名以上の現場社員がメンテナンス業務に従事しています。
様々なデジタル化に取り組んでいるものの、まだまだ紙による現場管理の仕組みが残っているのが実情です。
さらに、彼らに言われてハッとしたのは、単一業務のデジタル化(タブレット導入など)は進んでいるものの、全体の業務の流れがDXできていないというもの。
大きな組織で陥りがちな「縦割り」主義…。実は、現場レベルでも業務ごとの「壁」が存在していました。
今回、彼らとチャレンジするのは、そうした壁をぶち壊して、「点」ではなく「線」で業務を捉え、全体の業務フローをDXしようというもの。
紙と人力の世界が「車両メンテナンス1.0」だとすれば、ペーパーレスの世界は「車両メンテナンス2.0」。
これだけでも十分効果がありそうですが、今回はさらにその先、業務全体を見える化してデジタル化する「車両メンテナンス3.0」に挑戦します。
これ、目茶苦茶チャレンジングですが、だからこそ目茶苦茶やりがいがあります。
まさに、「ベンチャー×大企業」の共創の醍醐味。ベンチャーのテクノロジーと大企業のリアルな課題がぶつかって、具体的なカタチを創り上げていく生々しいイノベーションです。
このチャレンジから、鉄道の現場をアップデートしていきたい。日本中のインフラ現場の課題を解決したい…。彼らのビジョンと私たちの目指す姿は同じです。「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」。これを一緒に実現していきたいと思っています。
2社目は、「207㈱」です。
彼らと練り上げた共創プランは、「駅を物流拠点としたラストワンマイル配送ビジネスの実現」です。
207は、「いつでもどこでもモノがトドク、世界的な物流ネットワークを創る。」をミッションに、特に課題の大きいラストワンマイル配送の課題解決にチャレンジするスタートアップです。
彼らが提供しているサービスは大きく2つ。全国に20万人いる個人事業主の配送作業を効率化する「TODOCUサポーター」、そしてギグワーカーを活用した新配送サービス「スキマ便」です。
そもそも、この彼らのサービスが痺れるんですよね。
ラストワンマイル配送を担う個人事業主が大手の下請けになって再配達や負担増で疲弊している構造的な問題をデジタルの力で変える。しかも、そこで蓄えたデータを活用して、ギグワーカーでも容易に配送ができる新サービスを構築、物流業界の人手不足解消・DXを推し進める…。データ活用あるいはDXのお手本だと思います。
今回彼らとチャレンジするのは、この「スキマ便」とJRの駅を掛け合わせた、物流のラストワンマイルの課題解決、「駅を物流拠点としたラストワンマイル配送」です。
207が提供するのは、ギグワーカーを活用した新たなラストワンマイル配送サービス。JRが提供するのは、JRが保有する駅・遊休地です。
この掛け算が実現すれば、駅を共同配送拠点にした効率的な新物流の仕組みを構築することができます。
イメージとしては、駅を物流のデポにして、そこに一旦荷物を集約、そこからギグワーカーたちが個人宅等に配送に行くようなスタイル。周辺に住宅やオフィスが密集する駅にデポができることで、配送の仕組みが格段に効率的になることが見込まれます。
これによって、物流業界の人手不足を解消するだけでなく、ギグワーカーという新しい働き方の創出や環境にやさしい物流の実現など、さまざまな社会課題の解決に貢献することができます。
また、JRにとっても、これまで駅ナカに依存していた商圏を、その周辺にまで拡大するチャンスになると考えています。特にコロナによって移動が大きく減少している今、駅や鉄道の使い方も大きく見直さなければいけません。
実際に、当プランはすでに品川駅でテスト販売・配送も行っていて、そこでは駅ナカで販売している商品の配送や、新幹線で運ばれた鮮魚の配送など、駅や鉄道とのコラボのポテンシャルも探っています。
もちろん、遊休スペースの活用等で新たな収益確保にもつなげていければと思っています。
これも「ベンチャー×大企業」の共創の醍醐味ですよね。「地域を変える、鉄道を変える、社会を変える」というプログラム2021のテーマそのもの。
ベンチャー×JRなら、「こうなったらいいな」という夢をリアルに社会実装することができます。今後、本格的なPoCを実施して事業化をめざしていく方針です。
以上、プログラム2021優秀賞2社、カミナシと207との共創プランを紹介しました。
いずれも、デジタルの力をリアルな現場と結びつけた新たな事業のカタチです。
レガシーな会社の鉄道員(ぽっぽや)社長が「何を言ってんだ」とお叱りを受けるかもしれませんが、DXって、やっぱりリアルな現場と結びついてこそ、新たな価値を生むと思うんですよね。
だから、やっぱり「ベンチャー×大企業」のオープンイノベーションは、これからの時代、ますます大事になると思います。
私たちは、これからも「ベンチャー×JR」の事業共創にとことんこだわっていきます。
スタートアップの皆さん、一緒に本気のDX、本気の事業共創をやっていきましょう!…リアルな課題、いっぱいありますよー(苦笑)。