プログラム2023春募集のDEMO DAYを開催しました!

こんにちは。鉄道員(ぽっぽや)社長の柴田です。

「スタートアップ×JR」で新しい未来にチャレンジする事業共創プログラム、「JR東日本スタートアッププログラム」
先日(12/6)、2023春募集の採択企業を一堂に会して、DEMO DAY(発表会)を開催しました。

このプログラムも、2017年に第1回目を開催してから今年(2023年)で7年目
昨年から年2回募集に増やしたので、DEMO DAY(発表会)としては、今回が8回目となります。

これまでも、このプログラムから多種多彩な事業が生まれています。
無人決済店舗や新幹線を使った鮮魚輸送、無人駅グランピングや駅SDGsアート、ドローンを使ったメンテナンス革新などなど…。

なかなか本業を進める中では着想できない領域だったり未開拓の分野にチャレンジできるのがこのプログラムの醍醐味。
7年目8回目となるプログラムにも、そんな興味深いアイデアやテクノロジーを持つ挑戦者が集まりました。

今回、新たに共創パートナーに加わったのは9社のスタートアップです。
日本酒による地方創生だったり、2次交通の新たな選択肢だったり、鉄道高架橋での運搬ロボットだったり、折り工学やサビ取りレーザーを鉄道設備に応用しようだったり…。

そんな多彩なスタートアップと練り上げた9つの共創プランが、この日(12/6)DEMO DAYでお披露目されました。
ぜんぶ面白いので、ぜんぶ紹介したいのですが、さすがにムリ…。ということで今日は、その中から各賞を受賞した3社を紹介しましょう。


まずは、スタートアップ大賞を受賞した、株式会社トヨコー
チャレンジする共創プランは、「屋外高出力サビ取りレーザーの鉄道構造物への応用検証」です。

「鉄道業界のインフラの救世主になりたい」と、当プラグラムにかけるアツい思いからプレゼンをスタートしてくれたトヨコーの白井さん。
そこでは、私たち鉄道会社社員でもあまり馴染みのないインフラの課題が明示されました。鉄橋など鉄製設備のサビによる腐食、最悪の場合は落橋…。

鉄道現場では、そうしたサビによる腐食や被害を防ぐために、さまざまなサビ除去や塗装などの工事を行っています。
それでもいたちごっこ…。特に沿岸部の鉄道設備は、塩害のせいで対応の周期が早まっているのが大きな悩みでした。

さらにグラインダーやブラストなどの既存工法だと、人による作業負荷が大きかったり、大量の研削材が発生したり…。
なかには有害な物質もあって、まさに3K作業。しかも、この研削材を焼却処理するときに大量のCO2が発生するため、環境負荷の問題も顕在化しています。

(トヨコーの白井さん)

こうした「鉄道」事業者には切って切り離せない「鉄」のメンテナンス…サビの徹底除去に活路を開くのが、トヨコーの持つ屋外高出力サビ取りレーザーの技術なのです。
簡単に言うと、削るのではなく溶かす(溶融・蒸散・熱破砕)。これだと、研削材が生じず、現場の労力も軽減、環境負荷も軽減。さらに塩分も除去できるため再発防止にもつながります。

今回の実証実験では、実際に腐食の激しい沿岸部の鉄道施設でレーザーによるサビ除去を試行します。
そこで効果や現場での使用性などを検証、結果次第では他の鉄橋への展開を検討していきたいと思っています。

その先には、私鉄やJR他社、世界の鉄道も…。まさに、「鉄道業界のインフラの救世主」をめざすチャレンジです。
鉄路も鉄橋もサビを徹底除去して、安全安心も決してサビることのないように、一緒に新しいインフラメンテナンスの仕組みを構築していきたいと思います。


続いて、優秀賞を受賞したのは、建ロボテック株式会社
チャレンジする共創プランは、「鉄道高架橋上での作業に必要な資機材運搬補助ロボットの開発」です。

同社は、課題先行型マッチングイベント、通称「逆ピッチ」の採択企業
同イベントで示された鉄道現場の現状…特に線路メンテナンスが今なお多くの人手をかけて行われている実態を見て、「これはなんとかせなあかん」と香川から応募してくれました。

何しろ、同社が掲げるミッションが「世界一ひとにやさしい現場を創る」。私たちの線路メンテナンスの現状を放っておけなかったのでしょう。
そう思ってくれたのを喜んでいいのか反省すべきか微妙ですが、私たちが向くのは未来。未来に向けて、「世界一ひとにやさしい鉄道現場を創る」。思いは一つになりました。

今回、いくつもの課題があるなかで、特に取り組むのが鉄道高架橋での資機材運搬です。
これも様々な取り組みを進めているのですが、人手による作業が残っているところ。高さ15mもの高架橋に工事に使用する重い資機材を階段を昇り降りして運搬しているのです。

(建ロボテックの眞部さん)

しかも、鉄道工事は夜間の限られた時間に行わなければならないという特性から、作業前に資機材を高架橋上まで運び、作業後には下ろすという作業が発生します。
プレゼンで眞部さんは、その作業負荷たるや、夜中に重い荷物をもって金毘羅さんの階段を昇り降りしてるようなものだと言っていました。これは未来に向けて何とかしないといけないですね…。

そこで今、開発に着手しているのが、こうした作業の負荷軽減につながる資機材運搬補助ロボットです。
「補助」と付いているのがミソで、100%代替ではない、作業者と一緒に稼働することを前提としたロボット。それによって安全性の向上や開発コストの軽減につながります。

この辺りは、同社のめざす「ひとにやさしい現場」の真骨頂。ひととテクノロジーが共存して、現場の負荷を軽減していく、安全安心を守っていく…。
これは、私たち鉄道部門もめざしている未来のメンテナンスのカタチです。この補助ロボットを契機に他現場の課題解決も視野に、「ひとにやさしい鉄道現場」を一緒に創り上げていきたいと思います。


そして、審査員特別賞を受賞したのは、株式会社Agnavi
チャレンジする共創プランは、「酒蔵×一合缶×鉄道IPによる地方創生」です。

皆さん、日本酒は好きですか?多数決をとったら、ノーのひとが多いのかも…。
日本の文化でもある日本酒。ただ残念ながら、お膝元ニッポンで日本酒離れが加速度的に進んでいます。

消費量は50年前から77%減少、毎月3蔵が倒産、さらにコロナが追い打ちをかけて経営難に陥る酒蔵が増えています。
これは何となしないといけない…。日本酒を未来に残すため、ビールなど以上に地域性の高い日本酒の文化や地域の雇用を守るため、私たちにできることはないか。

そんな共通の強い課題感から立ち上がったのが、「旅する日本酒」プロジェクトです。
日本酒の充填から販売までを一気通貫して提供する、日本で唯一のサービス「ICHI-GO-CAN」(一合缶)を手掛けるAgnaviとJRとがタッグを組んで、新たな事業共創にチャレンジします。

(Agnaviの玄さん)

先ほどの質問を鉄道愛好家にしたら、きっとイエスのひとが多いんじゃないかしら。それほど、鉄道と酒の相性はいいように思います。
しかも、JR東日本の事業エリアは酒蔵が多いんです。日本酒を通じて、地域を元気にする、旅を活性化することができれば、地域にとっても鉄道事業者にとってもメリットが大きいものとなります。

Agnaviが提供する「一合缶」は、スモールサイズで旅のお供にぴったり。出張の帰りでも気軽に地元の酒を楽しむことができます。
そうした、"地域×日本酒"”鉄道×日本酒”を進めていくのが「旅する日本酒」。今回”Agnavi×JR”で切り拓いていく事業領域です。

これから取り組んでいくのは、旅先の魅力発信旅行のきっかけ創出の2軸。
前者は観光キャンペーンと合わせた地域一合缶の開発・販売、後者は首都圏エリアでの地域一合缶の販売や屋台方式の角打ち販売も検討しています。皆さんも一緒に、日本酒を飲んで地域を元気にしていきませんか?


ということで、プログラム2023春は、今日紹介した3件をはじめ9つの共創プランがスタートします。
どれもこれも、本気で社会実装を目指す事業共創プランです。駅と鉄道から未来を創るチャレンジ、これからも全力で進めていきます。

皆さん、よろしくお願いします!

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